アルコール依存症の減酒治療薬。
アルコール依存症は、身体、仕事、家庭などへ悪影響をもたらします。アルコール依存症の治療の考え方として、今まではアルコールからの決別、断酒が基本的な考えでした。飲酒関連の問題が発生しても家族や周囲の人の注意や説得を聞きませんし、断酒が前提の治療を受け入れることは難しいのが現状です。
断酒を目的とした今までの治療
第一段階(導入期)
まず、アルコール依存症の病気としての理解、受け入れ、治療への動機づけの時期。
第二段階(解毒期)
離脱症状に対処するため、断酒を目標として治療を開始します。それと併行、あるいは引き続いて、振戦せん妄などの合併する身体および精神症状を改善するための治療が行われる時期。
第三段階(リハビリテーション前期)
離脱症状や振戦せん妄などの症状が回復した後、断酒に向けての本格的な取り組みを開始。アルコール依存症に対する正しい知識を提供して飲酒問題の現実的認識を促し、生活上の問題点解決に向けて支援し、広範かつ長期的な視野に立ち、家族を含めた依存そのものに対する治療を一貫して進める時期。(自助グループや断酒会への参加)
第四段階(リハビリテーション後期)
再摂取時の対処法と予防、家庭内問題への対処などに着眼し、断酒の継続とともにストレス対処行動の獲得、家族の回復、生活の安定化などをめざす時期。
薬物関連障害の診断・治療ガイドライン(2002)、p.41-42より
断酒が前提の治療は入院治療でないと難しく、治療へのハードルは高いと言えます。
重度のアルコール依存症は断酒が前提でないと難しいといえますが、軽度~中等度のアルコール依存症の治療では、セリンクロ(ナルメフェン)の登場により断酒でなく減酒という選択肢を選ぶ事が出来る様になりました。
断酒ではなく減酒を目的とした治療 ナルメフェン(セリンクロ)とは
第一段階(導入期)
まず、アルコール依存症の病気としての理解、受け入れ、治療への動機づけの時期。
第二段階(減酒期)
減酒薬を使用しながら、飲酒量を減らしていく。このとき減酒記録は必ず必要。
この時期「明らかに酒量が減った」「ブラックアウトすることが減った」「意識がなくなるまで飲まなくなった」「「γ-GTP」「AST」「ALT」などの血液検査が改善してきた」などの変化が見られる時期。
(減酒にっきを当院では推奨しています)
第三段階(維持期)
今までの飲酒パターン、自身の対人パターン、人にやって貰ったこと、ストレスコーピングを向上させ、これからの自分の人生を見直すなどを進めていく時期。
お酒との上手な距離を保つコツをつかんでいく。
当院のセリンクロを使用したある患者さんの血液検査のデータ
(患者さん自身断酒の必要性を強く感じて来院してきた方でしたが、元々の飲酒量が多く、肝機能障害も高度でしたが、セリンクロを中心とした外来での治療でデータは軽減してきています。これからの自分の生き方を考えておられます。※患者さんの同意を得てホームページにアップしています)
最終的に重度のアルコール依存症に陥らない為に軽度~中等度のアルコール依存症の方の健康的なアルコール飲酒が出来るといいですね。
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