「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」は、原因不明の全身の疼痛(wide-spread pain)を主症状とし、不眠・うつ病などの精神神経症状、過敏性大腸症候群、逆流性食道炎、過活動性膀胱炎などの自律神経系の症状を副症状とする病気です。
痛みの程度は、軽いものから激痛まで幅広く、痛む場所が変化したり、天気や気候、ストレスなどによって痛みの強さが変わることもあります。
原因はまだ分かっていません。
身体的・精神的ストレスや、けがや手術などの外傷が引き金となり、中枢神経がエラーを起こして、痛みの感覚が高まってしまうのではないかと推測されています。
男性よりも女性に多く(男女比1-2:8-9)、特に中高年に多い病気です(30-50歳代)
原因不明のため、血液検査やレントゲン、MRIなどの検査をしても異常がみられず、
更年期障害や自律神経失調症と間違われやすい疾患です。
日本の人口の1.66%、約200万人の方が罹患していると見込まれています。
亜急性発症の方が多い(小児期からずっとということは殆どない)
何らかの心身の負荷、健康問題が契機となって発症することが多く、発症の時期が明確。
線維筋痛症は、死に至る病気ではありません。
しかし、『身体のどこかがいつも痛い』ということが延々と続くため、精神的にも追い込まれ、不安感や憂うつ感、不眠、イライラなどの精神症状が出やすくなります。
日常生活や社会生活に支障が生じ、
QOL(生活の質)が著しく損なわれる病気なのです。
線維筋痛症を公表した有名人
アメリカの歌手・女優のレディー・ガガ(Lady Gaga)さんは2017年に
自身のSNSで線維筋痛症を患っていることを公表し、活動休止の意向を示しました
レディー・ガガさんは病気の辛さを公に語ることで、多くの患者さんの励みとなりました。
また 日本人では八木亜希子(やぎあきこ)さん、フリーアナウンサーは2019年に
線維筋痛症の診断を受けたことを明らかにして、しばらく療養されていましたが
2020年に『LOVE&MELODY』(ニッポン放送)で番組復帰されています。
線維筋痛症の診断概念は主にアメリカのリウマチ学会(ACR:American College of Rheumatology)の診断基準で診断が行われることが多い疾患です。
そのアメリカリウマチ学会(ACR)の線維筋痛症の診断基準の変遷をまとめてみました。
①1990年基準
広範にわたる疼痛の病歴
指を用いた触診により18ヶ所の圧痛点のうち11ヶ所以上の圧痛を認める
⇒診断のために18ヶ所の痛みの確認が必要でした
当院でも線維筋痛症の治験で18箇所の 圧痛点を確認していました。
②2010/2011年基準
圧痛点ではなく自覚的疼痛を評価
線維筋痛症でよくみられる随伴症状(疲労感・起床時不快感・認知症状等)を
重視し、線維筋痛症の患者さんの全体像を把握することが求められていました
③2016年基準(現在の基準)
2010/2011年基準に加え
全身痛であることが必要(体の5領域のうち4領域以上の痛みがある)
痛みは少なくとも3ヶ月以上持続している
他の疾患の存在は除外しない(痛みを伴う疾患が併存していてもOK)
WPI(広範囲疼痛指数)が7以上、かつSSS(症候重症度)が5以上
又はWPI(広範囲疼痛指数)が4~6 かつSSS(症候重症度)が9以上
※WPI(広範囲疼痛指数)は5つの身体領域から19ヶ所の部位の検査をします
WPI(広範囲疼痛指数)は受診時の痛みでなく過去1週間の痛みを評価します
※SSS-A(症候重症度)は日常生活への支障がみられる頻度で評価します
(スコア3:ほぼ毎日・スコア2:週のうち半分くらい・スコア1:週のうち1~2日
スコア0:症状は問題とならない)
ICD-10での分類
M79.7 – 線維筋痛(Fibromyalgia)
ICD-11での分類
MG30.01 – 慢性広汎性疼痛(線維筋痛症を含む)
ICD-11では「慢性広範痛症(Chronic Widespread Pain)」のサブカテゴリとして分類されており、慢性疼痛疾患の一種として位置づけられています。MG30.01(慢性広汎性疼痛(線維筋痛症を含む)
当院では、主にリリカ(プレガバリン)、サインバルタ(ヂュロキセチン)、リフレックス・レメロン(ミルタザピン)・セレコックス、ノイロトロピンなどのお薬によって治療を行っていきます。
治療は、健康保険の適応内で行えます。
注射や投薬は医療行為です。
必ず医師の診察を受けていただき、医師と話し合って治療内容を決めていきます。
リリカは、今までの痛み止めとはちょっと異なった疼痛治療薬です。
痛みを発する過剰に興奮した神経系に対して、各種の興奮性神経伝達物質の放出を抑制することで鎮痛作用を発揮します。
世界105の国と地域で承認されており、日本では2010年6月に満を持して発売されました。
線維筋痛症にも効果があると見込まれ、2012年6月~保険適応の承認されたお薬です。
1日2回服用します。初期量は1日150mgを1日2回に分けて服用、300mgまで増量
(症状により最大600mgまで)とされていますが眠気やふらつき、めまいなどの副作用もあるため
現実的には少量から開始されることが殆どです。
2:サインバルタ(デュロキセチン)
サインバルタはSNRIと呼ばれるお薬です、元々うつ病・うつ状態の患者さん
に使用されていましたが、下行性疼痛抑制系の賦活作用があり
糖尿病性神経障害・慢性腰痛症・変形性関節症・線維筋痛症に伴う疼痛にも保険適応で
治療が可能となっているお薬です。
うつ病・うつ状態・糖尿病性神経障害に伴う疼痛では1日1回朝食後、デュロキセチンとして20mgから服用開始、通常40mgで治療(しかし最大60mgまで増量出来ます)
慢性腰痛症・変形性関節症・線維筋痛症に伴う疼痛でも1日1回朝食後、デュロキセチンとして20mgから服用開始、60mgを目標に増量して治療するお薬です。
慢性疼痛がある方は うつ病・うつ状態に陥っている方も多いので1つのお薬で2つの作用
をもっているため、一石二鳥の治療薬とも言えます。
3:リフレックス・レメロン(ミルタザピン)
NaSSA(なっさ)という新しいカテゴリーに分類されるお薬です。
SNRI同様に下行性疼痛抑制系の賦活作用が期待され、またNMDA受容体介在性伝達情報の抑制、
脊髄後角神経節細胞の電位在性チャンネル電流の抑制など迅速に筋肉の攣縮を緩和し
血流を改善させるような別の作用もあると考えられるお薬です。2010年明治製菓は治験を行いました、当院も治験に参加しましたが、結局は日本で線維筋痛症への適応は取得せず
線維筋痛症であって、併存としてうつ病・うつ状態の診断された方にはこの薬剤で治療を行っています。
1日1回就寝前に1錠(15mg)から開始するお薬です。15~30mg、最大45mgまで
4:セレコックス
セレコックスは、分類的にはロキソニンやボルタレンと同じ類型に属するNSAIDs(消炎鎮痛薬)です。
しかし、痛みに関する酵素により選択的に作用するため、通常のNSAIDs(消炎鎮痛薬)に生じる胃腸障害や臓器障害がとても少ない新しいタイプの鎮痛薬です。
痛みを抑える効果も強いため、大変期待が寄せられているお薬です。
1日2回服用します。100mg×2回(朝と夕食後)
ノイロトロピンは、通常の消炎鎮痛薬(バファリン、ロキソニン、ボルタレンなど)とは全く異なる作用があり、痛みを感じる神経の感受性を低下させることで鎮痛効果を発揮する、痛みの治療薬です。
消炎鎮痛薬のように胃腸障害や臓器障害を起こすことはほとんどなく、安心して長期でも使用できます。
発売は古く、1976年から。
しかし、最近になって難治性の痛みに対する効果が高まることが分かり、注目を集めています。
飲み薬と注射があります。
●ノイロトロピン注射
3mlを腕に皮下注射します。
当院では、注射の痛みが最小限になるよう、極細の注射針を使用しています。
ノイロトロピン注射の費用は、健康保険を使った3割負担で100円程度です。
(その他、診察料がかかります)
●ノイロトロピンの錠剤
1日2回、1回2錠 1日4錠を服用します。
【もくじ】
・「痛み」の種類
・肩こり・腰痛・背部痛
・脊柱管狭窄症(LCS)
・線維筋痛症
・心理的な原因の痛み
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