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​慢性疼痛 脳の痛みに対する誤作動

 痛みの分類はいくつかの方法がありますが
侵害受容性疼痛・心因性疼痛・神経障害性疼痛 に分けることがあります。

侵害受容性疼痛:炎症や刺激による痛み)→ケガや火傷をしたときの痛みです。ケガをするとその部分に炎症が起こり、痛みを起こす物質が発生します。この物質が末梢神経にある「侵害受容器」という部分を刺激することで痛みを感じるため、「侵害受容性疼痛」と呼ばれています。このような痛みのほとんどは、急性の痛みで、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)や腱鞘炎、頭痛、歯痛、打撲、切り傷、関節リウマチなどがあります。

心因性疼痛:心理・社会的な要因による痛み)→神経障害性疼痛同様、傷や炎症などは見えません。不安や社会生活で受けるストレスなど、心理・社会的な要因で起こる痛みです。

神経障害性疼痛:神経が障害されることで起こる痛み)→何らかの原因により神経が障害され、それによって起こる痛みを「神経障害性疼痛」といいます。帯状疱疹が治った後の長引く痛みや、糖尿病の合併症に伴う痛みやしびれ、坐骨神経痛、また脳卒中や脊髄損傷による痛みなどがあります。傷や炎症などが見えないにもかかわらず痛みがある場合には、神経が原因となっていることがあります。

この中で厄介なのが神経障害性疼痛だと言われています!!
ケガや手術の傷がすっかり癒えた後も,激烈な痛みが続く。何カ月・何年たっても消えない原因がなくなって、キズも治っているのにもかかわらず痛みが消えないのは、身体の損傷を検知して脳に伝える痛覚回路そのものに異常が起き、誤作動しているから!!
神経線維が物理的に接触して触覚や温度の情報や痛みに変換されてしまったり、痛みを感じるニューロンが異常に敏感になって、ほんの些細な刺激で発火したりすることがあります(アロディニア)。

最近の医学の進歩で神経障害性疼痛に対して効果的な薬物が発見されてきています。

当院は​慢性疼痛化してしまう疾患、線維筋痛症の治験を行ってきました。
線維筋痛症は痛みのみを中心に診ると 線維筋痛症 しかし
精神的要素を入れて診断すると身体表現性障害(疼痛性障害)ともとれる疾患です。その線維筋痛症の治療に関して
プレガバリン(リリカ)
デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ)
ミルタザピン(リフレックス・レメロン) 3つの治験を行いました、現在リリカとサインバルタは線維筋痛症の適応が取れています。 

リリカはCaチャネルのα2δサブユニットに結合し、Caの流入を抑制して、神経伝達物質の放出を抑えることで、一次ニューロンと二次ニューロンの伝達を遮断して、痛みを止める薬です。

サインバルタはSNRIと言われる薬でセロトニンとノルアドレナリンを強化します。特に痛みに関してはノルアドレナリンの効果です。

リフレックス・レメロンはこれまでのSSRIやSNRIとは全く異なる作用によって、飲み始めの1週目から効果を得られる新しい抗うつ薬でNaSSAと言われる新しい薬剤ですが直接「ノルアドレナリン」や「セロトニン」を放出させる (作動性)作用と「セロトニン」を正しい受容体へ導く作用がある (特異的)ことにより痛みに強くなることが期待されております。

危機的な時状況や夢中で何かをしていたりの時、痛みを感じない経験があるかと思いますが、ノルアドレナリンはそんな危機的状況で即時的に放出される神経伝達物質です。
元々ノルアドレナリンは意欲や気力を高める覚醒系に働きかけます。
「意欲」「不安」「恐怖」「緊張」と深い関係のある物質です。
気持ちもアップして行動的になり、痛みも軽減してくれるものです。

人間は不安があると痛みに対しての閾値が低くなり、ちょっとしたことで敏感に反応するようになってくるのです。

病は気から!! ​慢性疼痛は辛いものですが、気持ちを前向きにして、体を動かし、痛みに対して強くすることが重要だと思います。 

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