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10月からインフルエンザワクチン接種が始まりました、今年は公費接種がなくなったCOVID-19ワクチン接種も行うべきか? 

1:そもそもワクチン接種はどの様な機序でウイルスから体を守るのか?

ワクチン接種は、免疫システムを訓練し、特定の病原体
特にウイルスから体を守る方法を学習させるプロセスです。
ワクチンを通じて病原体に対する免疫記憶が形成されることで、
実際の感染が起こった際に迅速で強力な免疫応答が引き起こされ、
病気の重症化を防ぐことができます。

以下にワクチンの機序をまとめます。

1. ワクチンの基本的な仕組み

ワクチンは、実際のウイルスや細菌と同じ病原体そのものを接種するのではなく、
無害化または弱毒化された病原体、あるいはその一部(抗原)を体内に導入します。
これにより、病気を引き起こすことなく、免疫システムがその病原体を認識し、
将来的に防御できるようになります。

2. ワクチンの作用機序

ワクチン接種後、体は次のような段階を経て免疫を獲得します。

(1) 抗原提示

ワクチンが体内に投与されると、ワクチンに含まれる病原体の一部(抗原)が免疫システムに認識されます。

これにより、以下のプロセスが開始されます。

  • 抗原提示細胞(APC)(例: マクロファージや樹状細胞)
    がワクチンに含まれる抗原を取り込み、分解します。
  • 抗原が細胞の表面に提示され、免疫系の他の細胞に
    その存在を知らせます。

(2) 獲得免疫の活性化

抗原提示後、体内のヘルパーT細胞B細胞が活性化され、
次のような免疫応答が始まります。

  • ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞によって提示された抗原を認識し、
    他の免疫細胞を活性化する信号を出します。
  • B細胞は、抗原に反応して抗体を産生します。
    抗体は、ワクチンの成分に含まれる病原体の抗原に特異的に結合し、
    それを中和する役割を果たします。

(3) 抗体の産生

ワクチンにより刺激されたB細胞は、
特定の抗原に対する抗体を大量に産生します。

  • 抗体は、病原体の抗原に結合し、感染を防ぐために
    ウイルスが細胞に侵入するのをブロックしたり、
    ウイルスを無力化します。
  • 抗体に結合した病原体は、マクロファージなどの
    免疫細胞によって容易に認識され、除去されます。

(4) 免疫記憶の形成

ワクチンの効果の最大のポイントは、免疫記憶細胞の形成です。
B細胞やT細胞の一部は、記憶細胞として長期間体内に残ります。

  • 記憶B細胞は、将来同じ病原体に再感染した際に、すぐに抗体を大量に産生します。
  • 記憶T細胞も、同じ病原体が再び体内に入った際に迅速に反応し、感染細胞を破壊します。

この免疫記憶により、実際にウイルスに感染した際に、
体は迅速かつ強力に応答することができ、
症状の発現を防いだり、感染を早期に抑えることができます。
 

3. ワクチンの種類と作用機序

異なるタイプのワクチンは、異なる方法で免疫応答を誘導します。

(1) 生ワクチン

  • 弱毒化したウイルスを使用し、自然感染に似た免疫応答を誘導します。
  • 生きた病原体が弱毒化されているため、強力で持続的な免疫応答を引き起こします。
    例: 麻疹・風疹混合ワクチン(MMRワクチン)

(2) 不活化ワクチン

  • 病原体を化学的または物理的に殺して使用するワクチンです。
  • 病原体は死んでいるため、自然感染ほど強力ではありませんが、
    複数回の接種により効果を高めることができます。
    例: インフルエンザワクチン

(3) サブユニットワクチン

  • 病原体の一部(タンパク質や糖鎖など)を使用して免疫応答を誘導します。
  • 病原体全体を使わないため、安全性が高く、副作用が少ないのが特徴です。
    例: B型肝炎ワクチン

(4) mRNAワクチン

  • 病原体の抗原をコードするmRNAを体内に導入し、体内でその抗原が一時的に作られ、
    免疫応答が誘導されます。
  • ウイルスが含まれていないため、安全性が高く、迅速な開発が可能です。
    例: COVID-19ワクチン(ファイザー、モデルナ)
     

4. ワクチン接種の効果

ワクチン接種により、次の効果が得られます。

  • 個人の防御: 免疫記憶によって、再感染時に体が迅速に対応し、病気の発症を防ぐか、
    重症化を防ぎます。
  • 集団免疫: ワクチンを接種する人が増えることで、病原体が広がる可能性が減り、
    社会全体を守ることができます。
    特に、ワクチンを接種できない人(免疫不全者や乳児など)を守るためにも重要です。

まとめ

  • ワクチン接種は、無害化された病原体やその一部を体内に導入することで、
    免疫システムにその病原体を認識させ、免疫記憶を形成します。
  • 接種後、体はその病原体に特異的に反応する抗体を産生し、
    再感染時に迅速かつ効果的に病原体を排除します。
  • 免疫記憶により、病気の発症や重症化を防ぎ、さらに集団免疫の形成に貢献します。

ワクチンは、個人と社会全体の健康を守る重要な手段です。

  

2:そもそも免疫システムはどのようなものがあるのか?

人間の免疫システムには「自然免疫」と「獲得免疫」の二つのシステムがあります。
「自然免疫」と「獲得免疫」は、どちらも体の防御システムとして働き、病原体から体を守りますが、
作用するメカニズム、反応のスピード、特異性、そして免疫記憶の有無など、
いくつかの重要な点で違いがあります。

以下に、より詳しくそれぞれの特徴と違いをまとめます。
 

自然免疫(Innate Immunity)

自然免疫は、病原体が体内に侵入した際に最初に働く防御システムです。

特徴

  1. 即時応答: 自然免疫は異物が体内に入ると、すぐに反応します。
    事前に病原体に遭遇していなくても、数分から数時間で応答が始まります。
    第一段階の防御壁は、鼻や口の中の粘膜や唾液。
    病原体を退治する殺菌・抗菌の作用を持つ粘膜や唾液は、外部から病原体が侵入すると、
    咳やくしゃみ、タンなどでこれらを体外に排出しようとします

  2. 非特異的な反応: 自然免疫は特定の病原体に依存せず、広範囲にさまざまな病原体に対して
    同じように反応します。
    つまり、特定の病原体に対して特化した防御を行うわけではなく、
    体内に入ってきた異物全般に対して同じメカニズムを用いて対処します。

  3. 生まれつきの防御機構: 自然免疫は生まれた時から備わっており、
    学習や適応を必要とせず、全ての人が共通に持っているシステムです。

  4. 主要な構成要素:

    • 物理的・化学的バリア: 皮膚や粘膜、胃酸などが最初の防御壁として働き、
      病原体の侵入を防ぎます。
    • 食細胞: 好中球やマクロファージなどの細胞が病原体を捕食し、除去します。
      これらの細胞は特定の病原体に依存せず、異物を一般的に認識して攻撃します。
    • 補体系: 補体と呼ばれるたんぱく質群が病原体を直接攻撃したり、
      病原体を認識しやすくすることで他の免疫細胞の働きを助けます。
    • リンパ球、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、自然免疫系に属する
      重要な免疫細胞であり、主にウイルス感染細胞やがん細胞を破壊する役割を
      担っています。NK細胞は、獲得免疫と異なり、事前の学習や特異的な病原体認識を
      必要とせず、異常な細胞を素早く検出して即座に攻撃を行います。
  5. 免疫記憶がない: 自然免疫は、病原体に対して記憶を保持しません。
    何度でも同じ反応をします。

自然免疫の主な役割

  • 初期防御: 自然免疫は、感染の初期段階で病原体の増殖を抑える役割を担います。
    これは、獲得免疫が準備を整える時間を稼ぐためにも重要です。

 

獲得免疫(Adaptive Immunity)

獲得免疫は、病原体に対して特異的に反応し、時間がかかるものの
一度獲得すると長期間にわたってその病原体を記憶する免疫システムです。

特徴

  1. 遅延応答: 獲得免疫は、病原体が体内に入ってから数日から数週間かけて反応を開始します。
    この遅延は、獲得免疫が病原体を特異的に認識し、適切な免疫応答を準備するためです。

  2. 特異的な反応: 獲得免疫は、特定の病原体や異物に対して特化した応答を行います。
    各病原体に対して固有の抗原が存在し、その抗原を認識して免疫応答が引き起こされます。

  3. 免疫記憶: 獲得免疫は、初めて遭遇した病原体を記憶します。
    このため、同じ病原体に再び感染した場合には、より迅速で強力な反応が可能となります。
    この機構により、例えば麻疹に一度かかると、二度とかからないような免疫が得られます。

  4. 主要な構成要素:

    • リンパ球: 獲得免疫の中心的な役割を担う細胞です。
      B細胞とT細胞が主な役割を果たします。
      • B細胞: B細胞は抗体を産生します。抗体は特定の病原体を中和し、他の免疫細胞が攻撃しやすいようにマークします。
      • T細胞: T細胞には異なる種類があり、感染細胞を直接攻撃する「キラーT細胞」や、他の免疫細胞を助ける「ヘルパーT細胞」が存在します。
  5. 記憶細胞: B細胞やT細胞の一部は、病原体との初回の接触後に「記憶細胞」として体内に残り、再感染時にすぐに反応できるようになります。

獲得免疫の主な役割

  • 長期的な防御: 獲得免疫は、病原体に対する長期的な防御を提供します。
    ワクチンは、この免疫記憶を利用して病気を予防する手段です。
     


 

特徴 自然免疫 獲得免疫
反応のスピード 即時(数分〜数時間) 遅延(数日〜数週間)
特異性 非特異的 高度に特異的
免疫記憶 なし あり
主な細胞 マクロファージ、好中球、
樹状細胞、NK細胞
B細胞、T細胞
抗体の産生 なし B細胞が抗体を産生
感染後の効果 再感染に対しては
同じ応答を繰り返す
再感染に対して
迅速かつ強力な応答を示す
防御の持続期間 一時的な防御 長期的(時には生涯にわたる)
防御
病原体への反応 病原体全般に対して
同じ反応を示す
特定の病原体に対して
個別の応答をする

 

白血球 → 自然免疫  獲得免疫

  • 単球→異物を取り込んで処理し、ほかの免疫細胞に次の攻撃開始の指令を出す
    (マクロファージ樹状細胞) 
  • 顆粒球→殺菌作用があり、異物を発見すると取込、大量の活性酸素を出しながら自爆する。
    この死骸が膿(好中球好酸球好塩基球) 
  • リンパ球→顆粒球では対応出来ない小さな異物を処理、強い力があり、癌細胞もやっつける。
    (NK細胞T細胞B細胞) 

今年のインフルエンザワクチンは

A型株:ビクトリア株、カリフォルニア株
B型株:プーケット株、オーストリア株  から製造されています。

またCOVID-19のワクチンは5社から製造されていますが
当院はファイザー社製「コミナティ」をを採用しました。

インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチンの2つのワクチンは同日接種可能です。

基礎疾患を持っている方は是非接種を、また周囲に高齢者や受験生などがいる方も
是非接種をすることを当院では推奨しております。 

★インフルエンザ予防接種

インフルエンザワクチンは随時入荷(さみだれ式入荷)のため、
電話での予約を承っておりません。
接種希望の方はご来院の際、医師もしくはスタッフへお申しつけ下さい。
在庫ワクチンがある場合、ワクチン問診票記入後に可能な場合予防接種を行います。
ワクチンは入荷が途絶えた時点で終了予定です。

【料金】
◆一般の方
1回目 3,500円(税込)
2回目 3,000円(税込) (1回目の後1~4週間後)
※他医療機関で1回目を接種され、2回目を当院で接種する場合も3,500円(税込)です

◆福岡市内に住民票があり、接種日当日に65歳以上の方、
 もしくは60歳以上65歳未満で心臓、じん臓もしくは呼吸器の機能障害、
 ヒト免疫機能の障害がある方(身体障害者1級)
1回目 1,500円(税込)
※住所・名前・年齢が確認されるもの(例:健康保険被保険証・運転免許証・
 マイナンバーカードなど)の持参が必要です。
2回目 3,000円(税込) (1回目の後1~4週間後)

 

★新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」

新型コロナウイルスワクチンに関しましては、事前予約制とさせていただきます。
接種ご希望の方はご来院時、またはお電話にてご予約をお願いします。

新型コロナウイルスワクチン 料金 : 15,000円(税込)

また、令和6年10月以降の新型コロナワクチン接種は、
重症化予防を目的に、季節性インフルエンザと同様の「定期接種」として実施されます。

■実施期間
令和6年10月1日から令和7年3月31日までに1回

■対象者
福岡市内に住民票(外国人登録を含む)があり、接種を希望する以下の方
・65歳以上の方
・60歳以上65歳未満で、心臓、じん臓もしくは呼吸器の機能
 またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障がいがある方(概ね身体障害者手帳1級に相当)

※ご本人が希望する場合以外は実施しません。
(ご本人の明確な意思確認ができない場合は、定期接種の対象外となります。)
※予防接種は、接種当日に発熱がある人や、今までに予防接種によって
 副反応を起こしたことがある人などは受けることができません。
※接種前に接種日の体調などの情報を医師に伝え、
 医師の説明をよく聞いた上で接種を受けてください。

■個人負担金
3,200円

詳しくは、福岡市ホームページをご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

〒 810-0001

福岡市中央区天神1丁目2-12 メットライフ天神ビル4階 (2016年10月1日から天神122ビル→メットライフ天神ビルに変更 2017年10月1日で併記(移行)期間終了)

TEL:092-738-8733