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認知症になる前の検査、認知症の早期発見について

MCI(軽度認知障害)エム・シー・アイ
(脳の機能が正常な状態と認知症の中間の段階)

65歳以上の約8人に1人が認知症、
約7人に1人がMCIと言われています。 
MCIは認知症に至る過程ですが、
原因によっては現状が保たれたり、
回復したりする可能性のあるので
MCIの人が必ず認知症になるわけではありません。

早めに気づいて欲しいMCIのサイン 

1.何度も同じ事を尋ねてくる
2.物の名前が出にくくなった
3.約束を忘れてしまうことが増えた
4.前日の昼食、夕食の内容が思い出せない
5.新しい家電の使い方を覚えるのに時間がかかる
6.注意力が低下した
7.意欲が低下して趣味や外出に消極的になった
8.もの忘れの自覚はあるが他人事のように感じる
9.仕事にミスが増え支障がでるようになった
10.メモを取ることが増えた
11.突然、電車の乗り継ぎが分からなくなったり、道に迷うなどの経験をした
12.物を探し回ることが増えた
13.整理整頓が難しくなり部屋が散らかるようになった
14.決まった料理ばかり作るようになった
15.料理の味付けが以前と変わった
16.賞味期限切れの食べ物が増えた

MCI(軽度認知障害)の検査

認知機能の軽度の低下を診断し、
認知症への進行リスクを評価するための一連の手法です。
脳も体と同じ様に働き盛りの世代(青年期・壮年期)から
徐々に機能が衰えてきます。
体の機能低下を同じ様に脳の変化を意識することが大切です。 

MCIは、必ずしも認知症には至らないものの、
予防や対策を講じることで進行を遅らせたり
回復を促進したりすることが期待されています。
(研究によると1年で16-41%の人が認知機能が
戻ったと報告されています)
 

以下に、より詳細にMCI検査の内容、診断基準、
検査方法などを解説します。

1. MCI検査の目的

MCI検査は、以下の目的を持って行われます。

  • 早期発見: 認知機能の低下を早期に
    把握することで、早期対応や治療計画を立てる。
  • 進行リスクの評価: 認知症に進行するリスクを
    評価し、リスクの高い人に対して
    生活習慣の改善などの介入を行う。
  • 生活の質向上: 認知機能の低下が
    生活に及ぼす影響を最小限に抑え、
    生活の質を維持する。

 

2. MCIの診断基準

MCIの診断には以下の4つの基準が用いられます。

  1. 記憶や認知機能の低下が自覚されていること:
    本人または家族が認知機能の低下に気づいている。
  2. 検査で認知機能の低下が確認されること:
    年齢や教育レベルに比べて低い認知機能がある。
  3. 日常生活はほぼ自立して行えること:
    基本的な日常生活は行えているが、
    より複雑な作業に困難を感じることがある。
  4. 認知症の診断には至らないこと:
    MCIは認知症の一歩手前の状態として
    位置づけられるため、認知症と診断されるレベルには達していない。

 

3. MCI検査の方法

MCIの検査には、主に
心理検査画像診断バイオマーカー検査 ←当院で検査可能です
の3種類が含まれます。
それぞれの詳細は以下の通りです。

3-1 心理検査

認知機能を評価する心理検査は、
質問形式やタスクを通じて、記憶や言語、注意、判断力などを測ります。

  • MMSE(Mini-Mental State Examination):
    認知症やMCIのスクリーニングに
    広く使われるテストです。
    記憶、注意、計算、言語、視空間認識
    などを評価し、
    総合的に認知機能の低下を測ります。

    • 評価内容:
      言葉の記憶、簡単な計算、図形描写など。
    • 点数:
      30点満点で、24点以下の場合に認知機能の低下が疑われます。
  • MoCA(Montreal Cognitive Assessment):
    MMSEよりも詳細なテストで、
    特に軽度の認知機能障害の検出に優れています。

    • 評価内容: 視空間認知、実行機能、言語、
      注意、抽象的思考、記憶、定位能力など。
    • 点数: 30点満点で、26点以下の場合にMCIの疑いがあるとされます。

     

3-2 画像診断

画像診断では、脳の構造や血流を調べることで、
認知機能の低下に関連する脳の変化を確認します。

  • MRI(磁気共鳴画像): 高精度の画像によって
    脳の構造的な変化を調べ、
    海馬などの萎縮が見られる場合にMCIが疑われます。

    • 検査の特徴: 高解像度の画像で脳の
      萎縮部位を詳細に確認でき、アルツハイマー型認知症に
      特有の萎縮パターンの検出にも役立ちます。
  • CTスキャン: MRIよりも精度は劣るものの、
    脳内の異常を簡易的に検出するために使用されます。

    • 検査の特徴: 脳卒中や脳腫瘍など、
      認知機能に影響を及ぼす
      他の要因の存在を確認する際に有用です。
  • SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)
    ・PET(Positron Emission Tomography)
    :
    脳内の血流やアミロイドβの蓄積を画像化し、
    アルツハイマー病の早期診断に活用されます。

    • 検査の特徴: 認知機能に関連する
      脳内の化学変化を可視化でき、
      MCIからアルツハイマー病への進行リスクを評価できます。

  

3-3 バイオマーカー検査

バイオマーカー検査では、体内の化学物質やタンパク質を分析し、
認知機能障害のリスクを特定します。

  • 脳脊髄液(CSF)検査:
    脳脊髄液中のアミロイドβや
    タウタンパクを測定します。
    これらの異常がある場合、
    アルツハイマー病に進行するリスクが高いとされます。
  • 血液検査: 血中のアミロイドβやタウタンパクなどを測定する新しい方法が研究されています。

当院では、1回2ccの採血でMCI検査ができる
MCIプラススクリーニング検査を導入しております。
※ご希望の方は スタッフもしくは医師にご相談ください。
 料金:27,500円(税込み)

--- 検査結果サンプル ---

4. MCIの進行リスクの評価

MCIの状態にある人のうち、約10〜15%が1年以内に認知症に進行するとされています。
進行リスクは以下の要因で高まると考えられています。

  • 遺伝的要因: アルツハイマー病のリスクが高まるAPOE-ε4遺伝子の保有。
  • 年齢: 高齢であるほど認知症への進行リスクが上がります。
  • 生活習慣: 運動不足や不健康な食生活、社会的孤立はリスクを高める要因となります。

 

5. MCI検査後の対策・治療

MCIと診断された場合、以下の介入や対策が行われます。

  • 運動療法: 有酸素運動や筋力トレーニングは、
    脳の健康維持に良いとされています。
    特に有酸素運動は海馬を活性化させる効果があるとされています。
  • 食事療法:
    地中海式の食事やDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、
    認知症予防に効果があると報告されています。
  • 認知トレーニング: パズルや読書、語学学習などを
    通して、脳の活性化を図ります。
  • 社会的な関わり: 社会的な活動や交流を
    続けることで、認知機能の維持が期待できます。

 

6. MCI検査を受けるべきタイミング
  • 物忘れが増えたと感じる場合。
  • 家族や知人から指摘される場合。
  • 日常生活の複雑な作業が難しくなった場合。
  • 注意力や判断力の低下を感じる場合。

   

7. まとめ

MCI検査は、認知症のリスクを早期に把握し、
生活の質の維持や進行リスクの低減を図るための重要なツールです。
検査後には、生活習慣の改善や認知機能トレーニングなどを積極的に取り入れることで、
認知機能の維持や回復を目指すことが推奨されています。

 

 

 

 

 

 

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