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線維筋痛症の診断の変遷

線維筋痛症とは
全身の慢性的な痛みや疲労、
睡眠障害などを引き起こす疾患
です。
原因は完全には解明されていませんが、
中枢神経系の異常が関与していると考えられています。
 

症状としては …
  1. 広範な痛み(筋肉や関節の痛みが全身に広がる)
  2. 慢性的な疲労感(十分な休息をとっても疲れがとれない)
  3. 睡眠障害(熟睡できない、途中で目が覚める)
  4. 認知障害(ブレインフォグ)(集中力や記憶力の低下)
  5. 抑うつ症状・不安症状

  といった症状が挙げられます。

 

 

線維筋痛症の診断概念は、
主にアメリカのリウマチ学会
(ACR:American College of Rheumatology)の
診断基準で診断が行われることが多い疾患です。
そのアメリカリウマチ学会(ACR)の
線維筋痛症の診断基準の変遷をまとめてみました。

①1990年基準 

  広範にわたる疼痛の病歴
 指を用いた触診により18ヶ所の圧痛点のうち
 11ヶ所
以上の圧痛を認める
⇒診断のために18ヶ所の痛みの確認が必要でした 
 当院でも線維筋痛症の治験で18箇所の圧痛点を
 確認していました。

②2010/2011年基準

 圧痛点ではなく自覚的疼痛を評価
 線維筋痛症でよくみられる
 随伴症状(疲労感・起床時不快感・認知症状等)を
 重視
し、線維筋痛症の患者さんの全体像を
 把握することが求められていました
 

2016年基準(現在の基準)

 2010/2011年基準に加え 
 全身痛であることが必要
 (体の5領域のうち4領域以上の痛みがある)

 痛みは少なくとも3ヶ月以上持続している
 他の疾患の存在は除外しない
 
(痛みを伴う疾患が併存していてもOK) 

 WPI(広範囲疼痛指数)が7以上、
  かつSSS(症候重症度)が5以上 
 又はWPI(広範囲疼痛指数)が4~6
  かつSSS(症候重症度)が9以上
 ※WPI(広範囲疼痛指数)は5つの身体領域から
  19ヶ所の部位の検査をします。
  WPI(広範囲疼痛指数)は受診時の痛みでなく
  過去1週間の痛みを評価します。
 ※SSS-A(症候重症度)は、日常生活への
  支障がみられる頻度で評価します 
  スコア3:ほぼ毎日
  スコア2:週のうち半分くらい
  スコア1:週のうち1~2日
  スコア0:症状は問題とならない 

 線維筋痛症の原因としてはまだ解明されていませんが
 遺伝的要因・ストレスや外傷・自律神経の異常・
 中枢神経系の痛みの過敏化などが想定されている疾患です。

 

WHOの分類での線維筋痛症

ICD-10での分類
M79.7 – 線維筋痛(Fibromyalgia)
ICD-11での分類
MG30.01 – 慢性広汎性疼痛(線維筋痛症を含む)
ICD-11では「慢性広範痛症(Chronic Widespread Pain)」
のサブカテゴリとして分類されており、
慢性疼痛疾患の一種として位置づけられています。
MG30.001(慢性広汎性疼痛(線維筋痛症を含む)

 

線維筋痛症は
アメリカリウマチ学会では診断基準が確立されていま
すが ICD-11での分類
「慢性広範痛症(Chronic Widespread Pain)」
のサブカテゴリとして分類
 されましたが
まだ慢性疲労症候群の様に 診断を否定される医師も少なからず
存在します。 

診断基準に合致しない場合は治療方法がないのではありません
慢性疼痛、もしくは身体表現性障害としての治療アプローチはあります。
辛い症状に悩んでいる方は 線維筋痛症に詳しい医師へ相談ください。 

線維筋痛症友の会  
→友の会から医療機関の相談を受け付けている様ですよ。

 

 

 

 

 

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