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「新版・一流の頭脳 運動脳 BRAIN」の紹介

【著者】アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)

精神科医。スウェーデンのストックホルム出身。

カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、
ストックホルム商科大学にて企業経営を修めた。

現在は上級医師として病院に勤務するかたわら、
多数の記事の執筆を行っている。

主な著書に『スマホ脳』(新潮社)などがある。
 

「運動することがメンタルヘルスを高める秘訣」と
常々患者さんに言っていますが、
今回参考になる本の要約を書きました。
こちらの要約を見て興味を持たれた方は、
ぜひ本を購入して読んでみてください。
手元に置いて何度でも読んでいただくことで
習慣化が期待できます。
コチラからも購入出来ますが、
※当院はアフィリエイトはしておりませんので、
お好きなところからお買い求めください。

 

第1 現代人はほとんど原始人

・運動で脳は物理的に変えられる。

ランニングで体力がつくのと同じように、
身体を活発に動かした人の脳は
「認知機能(自発的に行動する、
注意力と抑制するなど)が向上し若返る」
ことが判明した。

つまり、
運動によって「脳のアップグレード」
できると示唆されている

 

機能的にすぐれた脳は、
脳細胞の数やたくさんつながっている脳ではなく
「各領域(例えば前頭葉や頭頂葉)が
しっかりと連携している脳」
である。

そして、その連携は
「身体を活発に動かせば強化できる」といわれている。

脳細胞のつながりは100兆以上あるといわれており、
それは絶え間なく変わり続けて永遠に開発途上である。
脳を操作しているのは私たち自身であるため、
脳の仕組みを理解した上で定期的に
「運動」することが何より重要である。

脳の変化は「魔法」でなく、誰でも起こせる

子どもの脳が柔軟で多くのことを
習得できるのは「刈り込み」といった
脳細胞を切り離す能力が高いためである。
この脳の変化を神経可塑性というが、
これは大人の脳にも存在し、

何歳になっても脳を変えることができる。

そして、20分から30分ほどの
運動を習慣化することで、

GABAの「脳を変化させない作用」が
取り除かれ、脳が柔軟になり再編成しやすくなる。

 

2 脳から「ストレス」を取り払う
[ストレスに負けない頭に変わる法]

頭を鈍らせる見えない敵は「ストレス」である。

そして、ストレスによる二大治療法は
投薬やセラビーだが、
実は「運動」にも目覚ましい効果があることが、
研究によって立証されている。

運動とストレスは、脳とって、
正反対の影響を及ぼす。

その理由は下記の4つである。

1. 運動を終えるとコルチゾールの血中濃度が下がる

コルチゾールとは、
HPA軸(H視床下部、P下垂体、A副腎)の
副腎から分泌するストレスホルモンである。

扁桃体が脅威(ストレス)を感じて
HPA軸に警告がいくと、
コルチゾールが分泌されて動機が激しくなり、
心拍数を上げ、自制心が失われることすらある。

2.定期的な運動を行うと、ストレス反応の
ブレーキペダルである「海馬」「前頭葉」
が強化され、不安の引き金となる扁桃体の活動を抑える

ストレスは記憶を司る「海馬」や
脳の思考領域である「前頭葉」を、萎縮する。

長期間ストレスにさらされると
物覚えが悪くなったり
ストレス反応に歯止めが効かなくなったりする。

3.運動によって「ニューロンの乳母」が増え、
脳内の興奮を鎮める
GABAの作用が活発になる。

4.運動して筋肉がつくことで、ストレス物質の
影響が少なくなる。

理由は、筋肉にストレスの代謝物である
「キヌレニン」を無害化する物質が含まれているため、
脳に対して無害になるためである。
しかしながら、研究知見を総合すると、
筋力トレーニングだけでなく
有酸素運動も一緒に取り入れるべきと示唆されている。

運動は、おそらく最もすぐれた
ストレスの解毒剤である。

フィンランドの研究では
「週に二回以上運動をしている人は
ストレスや不安とほぼ無縁である」
という結果がでた。

現代では、ストレスゼロの生活は難しい。
それよりもストレスに対する抵抗力を
高めるほうが賢明な選択である。

抗ストレス体質を培うには、
週に二、三回心拍数が大幅に増えるような運動
(ランニングやスイミングなどの有酸素運動)
を続けると良い。

 

第3 「集中力」を取り戻せ
[圧倒的成果を手にする没頭する技術]

身体を動かせば脳の機能が変わり、
脳本来のメカニズムが活性化することで、
選択的注意力と集中力が高まることがわかっている。

運動によってドーパミンの分泌量が増えると、
注意力と報酬系のシステムがうまく調整されるため、
集中力アップが期待できる

そして、ドーパミンの量を増やすには、
ウォーキングより身体に負荷を与える
ランニングの方が適している。
運動を終えた数分後にドーパミンの分泌量が上がり、
数時間はその状態が続くため、
感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まり、
心が穏やかになる。

運動で前頭葉を強化できる。

前頭葉は集中力をコントロールする
役目もあるので、運動で集中力アップが期待できる。

・ある研究によると、わずか5分ほど身体を
活発に動かすだけでも、子どもの集中力が改善され、

ADHDの症状も緩和されるといわれている

また、身体を動かした被験者の方が
集中力がすぐれていたという研究結果もあり
「集中力の違いは、遺伝子や環境でなく

生活習慣による」ことを示唆している。

・集中力を脳に戻すプラン

「歩くより走る」「運動は朝に」
30分続けて、習慣化する」

第4 うつ・モチベーションの科学

・神経伝達物質のセロトニン、
ノルアドレナリン、ドーパミンの
3つが
感情に影響を及ぼすといわれており、
うつ病はこれらが欠乏することと
密接に関わっていると考えられている。

そして、この3つとも薬や運動で
量を増やすことができ、
その中でも運動は「副作用なし」の
処方といえる。

モチベーションを高める
脳内最強物質は「
BDNF(脳由来神経栄養因子)」
である

BDNFが分泌されることで、
脳で新しい細胞が次々と作られて
「意欲の低下」や「うつ」を防ぐことができる。

また、BDNFは以下のすばらしい効果も期待できる。

●脳の細胞間のつながりを強化し、
 学習や記憶の力を高める

●脳の可塑性を促して細胞の老化を遅らせる

そして、このBDNFの生成を促すのに
「有酸素運動」が効果的といわれている。

第5 「記憶力」を極限まで高める

運動以上に記憶力を高められものはない。

なぜなら、記憶の中枢である「海馬」は
脳の領域の中で「
BDNFの生成量」が
最も多いといわれている。
運動は
BDNFの生成を促し、
BDNFは海馬の成長を促す。

ある研究で
「心拍数の上がらないストレッチをした」Aグループと
「週に3回40分早足で歩いた」
Bグループで
比較したところ、
Bグループの海馬が2%成長した
という結果がでた。

運動をすると「短期記憶と長期記憶」がともに改善され、
加齢による海馬の萎縮にストップが
かかるだけでなく成長することがわかった。

「海馬」は運動によって最も恩恵を得る部位である。

そして海馬はとても大切な器官であり、
強化されると思考のスピードが早くなり、
様々な変化を実感することができる。

暗記力を最大限に上げたいのであれば、
テストの直前に運動をするか、
もしくは運動と暗記を同時にすることをおすすめする

その理由はまだはっきりとは分かっていないが、
運動すると脳の血流も良くなり、
記憶力も上がると示唆されている。

暗記に限っていえば、
疲労を覚えるほど運動すると逆効果である。
疲れると筋肉が血液を必要とするため、
脳に流れる血流が少なくなると考えられているからである。

ゲームやアプリの「認知トレーニング」は
本当の脳の認知能力アップには効果がない

この類のものをおこなっても、
ゲームそのものは上達するが、
集中力や創造性が改善されたり記憶力が向上したり
といった効果はないと専門家たちは提言している。

第6 頭のなかから「アイデア」を取り出す

運動をすると「創造性」が増すことも
科学的に立証されている。

その研究は、歩きながらテストを受ける
ことで「創造性が高まった」というデータがあり、
概要としては、歩いた場所は関係なく、
環境の変化より動くということが影響が
大きいことがわかった。

運動によって創造力を高めたいのであれば、
健康体であることが重要だ

体力がなく運動で疲労することで、
筋肉に血液が流れてしまい、
脳の血流が減って逆効果になってしまうためだ。

運動は、発散的思考や収束的思考に
役立つばかりでなく、地道に努力するための
気力を養うことにも役立つ。

運動によって肉体的、
精神的に強くなることで、
根気よく創造に取り組むことができる。

・「視床」は脳が情報に埋もれないように
フィルターの役目をしている。
このフィルターが正常に働くためには
ドーパミンが必要だが、
この量が多いと脳に情報が溢れてしまい、
精神を病む(総合失調症など)可能性もある。
しかし、
運動で脳の他の機能を高めることで、
その過剰な情報をうまく対処して、
創造性を高めることも期待できる

 

第7 「学力」を伸ばす

・子どもの記憶力や学習能力を驚異的に
伸ばす方法として、
科学の研究が立証した「身体活動」
に着目すべきだ。

子どもでも、運動で「海馬」を大きくすることが
できると示唆されており、
体力のある生徒群の方が記憶力のテストで
高得点をとったという調査結果
もある。

また「9歳児が20分運動すると
1回の活動で読解力が格段に上がった」や
10歳児が4分の運動を1回するだけでも、
集中力や注意力が改善された」
というデータもある。

・子どもが潜在的な能力を
存分に発揮するためには
身体を活発に動かさなければならない。

どのような運動が良いかというと、
まずは本人が楽しいと思うことが良い

好きな運動をさせただけで、
特別な勉強を一切していないのに
全員が算数の試験の点が上がった、
という結果もある。

小学校に通う学童期が、
最も運動の恩恵を得られると示唆されている

そしてポイントは「心拍数を上げること」

身体をよく動かすことで
脳の灰白質と白質の働きが強化され、
そのことが知能の向上につながる。

激しく動く必要はなく、
毎日をできるだけ活動的に過ごすだけでも
効果が期待できる。

学校でも職場でも立って作業すると脳が効率よく働く。

立ち机を使うと、
テストの結果が平均で
10%も上がるという
データもあるほどだ。

第8 健康脳

加齢による前頭葉の萎縮の進み具合は、
カロリーの消費量と密接に関わっている。

よく動いてカロリーを消費する日人は、
加齢による前頭葉の萎縮の進行が
遅くなると示唆されている。

ある研究では
「運動をしている女性は脳が機能的に
3年分若い」
という結果も出た。

この場合も、過酷な運動は必要なく、
毎日
20分ほど歩くだけで十分と考えられている。

・人類の3分の1
「脳の老化や海馬の萎縮を早め、
知的能力の衰えを促す遺伝子を持っている」
といわれている。

運動をして知性が衰えないためのコンディション
を保つことが大切だ。

毎日意識して歩くと
「認知症」発症率が
40%減るというデータがある

歩いたり走ったりしていると、
脳内では様々な領域が協調しながら活動している。

あらゆる視覚情報が同時に処理され、
運動皮質は身体を動かすために
広範囲で忙しくはたらき、
脳の広い領域が活発化する。
逆に、クロスワードパズルを解く時に
使われる領域はほぼ言語中枢である。

認知症の一番の薬は、
脳の活動量が大きい「歩くこと」なのだ。

・日本の沖縄にもある
「ブルーゾーン(幸福かつ健康に長生きできる
地域として人口統計学者が名付けた)」
の住民は、非常によく身体を動かしている。

運動らしい運動をするわけでなく
「毎日歩く」「いつも階段を使う」などの、
長寿で認知症にならない生活を楽しんでいるのが
病気をよせつけない秘訣と考えられている。

第9 最も動く祖先が生き残った

生物学的には現代人の脳と体は
今もサバンナにいる

(人類史を24時間に変換すると、
デジタル社会が始まったのは23時
5959秒。
つまりたった
1秒しか経っていない)

脳は身体を動かすと
ドーパミンを放出して気分が爽快になるように
プログラムされている。

身体を動かすことで、
狩りをしたり危険な猛獣から逃げたりと
「生存の可能性を増やす行為」
と認識されるからだ。

多くの現代人が
心や身体を病んでしまう理由は
この「脳のプログラム」と、
座っていても快適に過ごせる「現代の環境」
の矛盾である。

第10 運動脳マニュアル

・脳に最も効果的な運動量は、
まだ明確な答えはない。

しかし、実験データに基づいて、
以下の条件や目安をお伝えする。

●わずかな1歩でも脳のためになる
(楽しいと思える活動を!)

●より高い効果を得たいなら
「最低
30分のウォーキング」

●脳の最高のコンディションのためなら
「週
3回、45分以上のランニング」
(心拍数を上げよう!)

●有酸素運動が望ましい
(筋力トレーニングよりも
 脳に良い効果をもたらす)

●根気よく、決してあきらめず、続けよう!
(週に数回の運動を半年以上続けると、
 変化を実感できる)

 

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