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PTSDを漢方薬で治す 

1:神田橋処方

漢方薬の組み合わせによっては PTSDに対して効果があるものが知られています。
精神科医の間では有名な神田橋処方と呼ばれているものです。

神田橋條治医師が臨床経験を通して導き出した処方です。
精神科的な症状(特にトラウマや身体症状を伴ううつ、不安)
に対して「心」と「身体」の両面に作用することを重視
した処方です。

この処方は、以下の2つの漢方薬を同時に服用することが基本とされています。​

  1. 71番 四物湯(しもつとう):​当帰、芍薬、地黄、川芎の4つの生薬から構成され、
    血を補い、血行を改善する効果があります。
       

  2. 60番 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):​​桂皮、芍薬、甘草、生姜、大棗
    からなり、筋肉の緊張を緩和し、内臓を温める作用があります。​
      

 

 

2:ポイント
  • 即効性があるケースも報告されており、急なパニック発作や不安発作時の「頓服」として使われることもあります。

  • 不眠、過敏、身体の緊張、冷え、不安感など「トラウマ後の反応」に対し効果を示すことが多い とされています。

  • 「神経過敏」や「HSP気質」と言われるような人にも向いていることがあります。

3:四物湯+桂枝加芍薬湯の組み合わせの意味

神田橋処方は、東洋医学の理論でいうと「血虚」+「気滞」や「寒」に対処するものと解釈できます。

  • 71番 四物湯(しもつとう):血を補い、血行を促進 → 鬱滞を改善

  • 60番 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):筋肉や内臓の緊張を和らげる → 体の防衛反応(過敏)を緩める

これらを合わせることで、心身が「緊張→弛緩」へと向かうよう調整され、過覚醒状態が緩和されるのです。

4:応用される症状や病態の例
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)

  • パニック障害や社交不安障害

  • 強迫性障害(OCD)の一部

  • 解離症状

  • HSP(Highly Sensitive Person)の過敏な反応

  • 自律神経失調、慢性疲労

5:その他の漢方

1. 54番 抑肝散(よくかんさん)
対象症状:怒りっぽい、不安、不眠、イライラ、神経過敏、幻聴、過敏な反応

特徴:「肝気の亢進」を抑える。自律神経の安定にも。

よく使われるケース:発達障害、認知症の興奮、不安症など

2. 24番 加味逍遙散(かみしょうようさん)
対象症状:情緒不安定、うつ傾向、月経不順、ストレスによる体調不良

特徴:気の巡りを良くし、血を養う。特に女性のストレス体質に向く。

よく使われるケース:PMS、更年期うつ、過去の性的トラウマによる情緒の乱れなど

3. 12番 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
対象症状:過緊張、不安、不眠、焦燥感、恐怖心

特徴:自律神経のバランスをとり、精神安定に寄与

よく使われるケース:パニック障害、PTSD、慢性不安

4. 65番 帰脾湯(きひとう)
対象症状:不安感、健忘、動悸、疲れやすさ、胃腸虚弱

特徴:心と脾(思考と消化)を補い、精神疲労を回復

よく使われるケース:長期ストレスによる心身の虚弱、虚無感、心因性の胃腸障害

5. 26番 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかしゅうこつぼれいとう)
対象症状:過剰な緊張、不眠、性的不安、夢精、恐怖感

特徴:神経過敏な人の「体の芯の緊張」を緩める

よく使われるケース:トラウマ由来の過緊張・不眠・性的トラウマ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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